うたに詠まれた有馬

 古来、多くの人が有馬をうたに詠んできました。多くの有馬を詠んだうたの中から「有馬温泉百人一首」を選定していった経緯などのお話を有馬町の伊勢野志津子様より投稿いただきました。

なお、この文章は有馬ふれあい協議会発行の「ありま瓦版」第270号(令和2年9月1日発行)にも掲載されています。

鹿の音も  ふけゆく夜半の 山の端に

  すみのぼる月の   影のさやけさ 

有馬温泉の周りの山々が夜のとばりに包まれるころ、東の山、巧地山(;射場山)の稜線から明るく大きな月が昇っていきます。

近くでは、恋しい相手を想う鹿の鳴き声が聞こえてきます。

 これは、有馬六景(ねねばしに掲示)の一つ『巧地山秋月』 (1770)です。有馬の秋の趣き深い情景が思い浮かびますね。


 有馬温泉は西暦631年の舒明天皇行幸を最初の記録として、長く豊かな歴史を持っており、日本三古湯、三名泉に数えられています。『日本書紀』以来、多くの記録や文学に描かれ、愛されてきました。膨大な文献や史料の中から、風早恂氏、長濃丈夫氏、森博氏、永岡大純氏、藤井清氏といった先人が、有馬温泉に関するものをピックアップして、有馬のすばらしさを視覚化してくださいました。

 平成1 7年には、ふれあいのまちづくり協議会が兵庫県の県民交流広場事業の助成を受けて『有馬文庫』を地域福祉センターに開室しました。私は、縁あってこの事業に関わらせてもらい、また今も史資料の収集や整理をさせてもらっています。

  文庫に集まる史資料の中に、有馬温泉に関する和歌が意外に多いことが分かりました。これらを百人一首の形でまとめようとの機運が起こり、地域史家としてご活躍中の園田学園女子大学名誉教授 田辺眞人先生を中心に選考作業に着手しました。

 二千首を越える中からの選考は困難でありましたが、有馬温泉観光協会や有馬婦人会、 「有馬史を読む会」などボランティアのみなさんの協力も得て、平成234月『有馬温泉百人一首』をまとめることができました。

 カルタは、全日本かるた協会公認の大石天狗堂で作成しました。読み札の絵は、妻木敏彦氏(当時有馬連絡所所長)主宰の志刀会のみなさんが一枚ずつ絵柄の違う切り絵を用意してくださいました。

 この百人一首が完成してもうすぐ1 0年になります。

ぜひ、手にとって見てもらい、改めて有馬温泉のすばらしさを感じてもらいたいです。

 歌はカルタだけでなく歌碑になっているものも多くあります。

 有馬温泉百人一首の中から歌碑があるものをあげてみました。

 町を歩いて探してみるのはいかがでしょうか。


大意

有馬温泉に行く途中、笹原が美しい猪名野というところがあり、風が吹いて笹がよそよと音がします。そうですよ、どうして貴方のことが忘れることができるでしょう。

 (百人一首にも選ばれています)